としなかの数学ブログ

数学について語ります

解3(1)-2016年京都大学特色入試の類題の解答

どうも.

としなかです.

 

今回の解説はとても長いです.

ですので,小問ごとに解説を投稿しようと思います.

というわけで,早速問3の解説を始めましょう.

 

 

皆さんは解けたでしょうか?

かなり難しかったでしょう.

実際の入試に出題されたら,この大問の平均点は1/10になるでしょうね.(笑)

特色入試では誘導があったので,恐らく6/18くらいは平均点があったと思いますが……(数学好きの猛者の平均点で6/18はあまりにも低いけど)

 

今回は(1)の解説です.

(2),(3)に比べて幾分か簡単ではありますが,それでもかなり難しかったはずです.

(1)は難度Cです.

 

それでは解説を始めましょう.

適当なa,nで実験してみて気づいたでしょうか?

まずはa=5,n=5のときについて考えてみましょう.

下のような並びのとき,重複度5になります.(重複度とは,回転して同じ並べ方になるようなものの総数)

実際に,上の並びを回転して同じになるものは以下の4つがあります.

また,次の並びは重複度1です.

他の場合も考えたらわかりますが,a=5,n=5のときは重複度1のものと重複度5のものしかありません.

それに対して,a=5,n=6のときについて考えてみましょう.

このとき,重複度1のものと重複度6の並べ方も存在しますが,次の並びは重複度3になります.

実際に,上の並びと回転して同じになるものは以下の2つがあります.

 

さて……

n=5のときは重複度は1と重複度5の2つしかありませんが,n=6のときは重複度1と重複度6以外にも重複度3が存在します.

その違いはいったい何でしょうか……?

 

それはn素数であるか否かであります.

 

dnの約数とすると,重複度dとなる並びが存在します.

すなわち,n素数のとき,重複度は1とnしか存在しません.

これを指針に解答しましょう.

 

解答に入る前に,1つ補題を示しておきましょう.

 

 

証明

まず,m,2m,...,pmのそれぞれをpで割った余りが異なることを示す.

次の式を満たす異なる整数a,bが存在すると仮定する.

このとき,式変形をすると次のようになる.

mpの倍数ではないので,

となり,1≤a<b≤pであることから,a=bとなる.

よって,m,2m,...,pmのそれぞれをpで割った余りは異なる.

m,2m,...,pmp個の整数であり,pで割った余りは0~p-1p種類あるので,任意の整数n' (0≤n'p-1)に対してkmn'となる整数k (1≤kp)が存在する.よって,題意は示された.

★★★★

 

問3(1)を解く際にこの補題が必要になります.

では,以下解答.

 

解答

ある1枚のカードに書かれている数字をx(1)とし,それから左回りにx(2),x(3),...,x(n)とする.

左にm個回転して同じ配列になるようなものを考える.ただし,1≤m<nである.

このとき,次の式が成り立つ.

このとき,x(1+m)を左にm個回転させたものx(1+2m)x(1+m)と等しくなるので,x(1)=x(1+m)=x(1+2m)=...となる.

ここで,先ほどの補題より1+km≡0 (mod n)となるkが存在するので,x(1)=x(1+km)=x(n)となる

よって,x(1)=x(n)である.

同様にして,任意のi=1,2,...,n-1についてx(i)=x(n)となる.

すなわち,重複度nでない並び方は重複度1しか存在しない.

重複度1の並び方はa通りしかない.

以上より,求める場合の数は,

である.

★★★★

 

これで(1)は求まりました.

(1)でこのボリュームって……と萎えてしまいそうですが,引き続き(2)の解説もご覧ください.